今こうしている間にも、戦争で傷付き、倒れている人がいるだろう。


血を流している人が、いるかもしれない。


もちろん、そんな人がいないのが一番いい。


でももしいるなら、それは日本人でなければいいと思う。


知ってる人でなければいいと思う。


そう思う私は、最低なのだろうか――



心にどんよりと覆い被さった灰色の雲が、キシキシと美菜の中で唸りを上げていた。


美菜はのろのろと立ち上がり、誰にも声を掛けることなく、居間を後にした。


達也はそんな美菜をちらりと見て、静かにテレビをつけた。