「だけど、候補生になるには親の承諾が必要だから……
親にはまだ言ってないんだ」
弘はそう言って、ガシガシと頭を掻いた。
美菜はそんな弘の決心に、何と返せばいいのかわからなかった。
『この町を、晴香を、守りたい』
その気持ちは美菜にも痛いほど理解できたから。
以前なら『こんな町』と吐き捨てたかもしれない。
けれど今は、『変わって欲しくない』と、つい先程も思ったばかりだ。
そしてひとつの考えが頭に浮かぶ。
「でも、候補生になって訓練したら、いつかは戦争に行かなきゃならなくなるかもしれない。
そしたら、死ぬかもしれないんだよ?
もし死んだら、晴香やおじさんおばさんはどうするの?」
息子がそんなところへ行くのを、親が許すはずがない。
美菜は弘の両親の顔を思い浮かべながら、強い口調で言った。