電車に乗ると、土曜日の朝という事もあって、平日の満員電車よりは少し空いていた。


「大丈夫か?」

「ん?」

「立ったままで。」


隆志は私が座れない事に気を使っているみたい?


「そんなの大丈夫だよ?」


私は、掴まっていたつり革を放して隆志の腕をポンッと叩こうとした。


「うわっ!」


私は手を放すと同時に、グラっと倒れそうになった。
けれど倒れそうになった先には、隆志の胸・・・。


「ほら、お前はこういうところが抜けているからな。」


隆志は笑いながら私を胸で受け止める。
隆志の洋服からはほのかな甘い匂いがした。
良い香り・・・。って、


「ごめん!」


私は、急いで隆志から離れようとする。
すると「いいよ」と隆志の片腕はスッと私の背中へと回ってきた。