春を迎えた。

千依は無事短大を卒業し、
これでやっと結婚できる、
そう考えていたのに、
物事は思いの外
うまく運ばなかった。

まず、千依の母親が反対した事。

これは考えていなかった。

千依の母親の言い分はこうだ。

『千依は短大を卒業した
ばかりなのだから、
もう少し社会経験を
積んでからの方が
良いんじゃないの?』
という意見。

千依の母親の言う事は
勿論正しい。

それは圭吾が病気では
無かったら十分通用するし、
彼も従おうとするだろう。

だけど彼には時間が無い。

最近また風邪を引いたらしく、
調子が良くない。

だから彼は少し焦っていた。

(千依は説得するよと
言っていたけれど
大丈夫だろうか?)

不安になってきた。