その時、向こうから声がした。

「おぉ〜い、圭ちゃ〜ん!
翔ちゃ〜ん!」

翔吾が気づいて、
「おぉ、来た来た。」
と、言った。

振袖姿の千依は、
小走りで近づいてきた。

「ちー、そんな走るなよ。
着崩れんぞ。」

「大丈夫だよっ。」

千依は翔吾に
ピースサインを見せて言った。

そして、圭吾の側に
しゃがんで、
「おはよ、圭ちゃん。
…もしかして、具合悪い?」
と、言った。

車椅子に乗っている
からだろうか?

「いや、これは
人混みだから念のため。
深い意味は無いよ。」

「なんだぁ、びっくりしちゃった。
前から成人式すっごく
楽しみにしてたからさ。」

「楽しみにしてんだから、
具合悪くする訳ないだろ。」

「それもそっか。」

そんな会話をして、千依は
翔吾に声をかける。

「じゃあ、翔ちゃん。
私、圭ちゃん連れて
先に入ってるね。」

「おう、頼むわ。
何かあったらメールよろしく。」

「了解デス。」

千依は笑顔で小さく
敬礼をした後、
圭吾の車椅子を押して
中に入った。