千依が黙って居なくなった頃、
千依の家は借金取りに
追われていた。

父親が友人の借金の
連帯保証人に
されていた為だった。

一生懸命働いても返せない金額。

毎晩繰り返される押し掛け。

怒鳴り声がいつまでも続き、
近所にも迷惑だと言われた
一家は、ついに夜逃げを決意。

千依は泣く泣く友達に
行き先を告げず
深夜ひっそりと引っ越し、
双葉で生活を始めた。

つかの間の幸せ。

でも、借金取りの魔の手は
すぐに迫ってきた。

どうにも出来なくなった家族は、
一家心中を考えたがそれも失敗。

脅えながら暮らす毎日。

そのうち、とうとう
耐えきれなくなったのか、
父親1人で自殺を図り、
亡くなってしまったのだという。

母は娘を守るため、
弁護士を通じて夫との縁を切り、
借金取りが追ってこないように
双葉の隅っこで働き始めた。

高校を中退した娘が
再び学校へと通えるように、
定時制に通わせ、
さらに一生懸命働いて
大学にまで
出してくれたのだという。