翌日、圭吾はクマ先生から
千依について、
気になる情報を手に入れていた。

「え…千依、
クマ先生の病院に来たの?」

「あぁ。」

「いつ?」

「俺がこっちに来る数ヶ月前、
ちょうど正月休み位かな。
風邪を引いて熱を出してて、
俺が当直だったから
診てやった。」

「それで、そこの
住所とか解らないの?」

「それは教えられないさ。
個人情報だからな。」

「やっぱり…。」

「そう肩を落とすな。
詳しいことはダメだが
簡単なことなら教えられる。」

「本当に!?」

「あぁ、双葉町だ。」

双葉町は、ここの隣町であり、
ここよりは小さいが、
活気のある港町として
この辺では有名である。

(そこに…千依は居るんだ。
早く会いたい。)

「そこにいるんだ?」

「恐らくな。」

「どういう事?」

「そこに居たのを見かけたのは、
あくまで数ヶ月前だ。
引っ越している可能性もある。」

「そっか…。」

定住しているなら
望みはあるけれど、
転々としているなら話は別だ。

「安心しろ。
風邪を引いてはいたが、
楽しく暮らしている
みたいだったから。」

「そりゃ幸せそうなら
別に良いけど、
僕には彼女に伝えなきゃ
ならない事が山ほどあるんだ。」

「で、会いたいのか?」

「うん。…ダメ?」

「今のままじゃ探しても
ラチがあかないぞ。
双葉町という事しか
解らないんだから。」

「それでも、何も
手がかりが無いよりマシだよ。
クマ先生、この数年
居場所を知りたくて
僕がどれだけの事を
してきたか、知ってる?
もう、僕には
時間が無いんだよ。」

しばらく沈黙が続く。

そして、クマ先生が口を開いた。

「…解ったよ。
ただし、行く時は俺も一緒だ。
そうでなければ認めない。」

「大事な話する時は
二人きりにしてよ?」

「はっはっは!!心配すんな。
お前らの邪魔はせんよ。」

クマ先生は、ここが病院と
いう事を忘れているかのように、
大声で笑った。

「まずは体調を整えろ。
探すのはそれからだよ。」

そう言って病室を出ていった。