愛車の無事に満足した松田刑事も加わって、五人でおトキを取り囲むが、崖を背にしたおトキにはそれ以上近づく事が出来なかった。
「それ以上近づいてごらんなさい!私はここから飛び降りますよ!」
自らの身を人質にして、おトキが最後の抵抗を試みていたからである。
「どうしよう……これじゃ、手が出せないよ……」
困り果てるシチロー達。
「おトキさん!諦めて自首しようよ!そんな事をしてたら家族の方も悲しむよ!」
「ちょっと、ひろき!おトキさんには身内の人がいないって、岡崎さんが言ってたわよ!」
「ああ~そうか~♪
それじゃあ、悲しむ人なんていないね♪コブちゃん」
「でも、もし死んじゃったら、お葬式とかどうするのかしらね?」
「海に落ちたら、遺体も揚がるかわからないでしょうしね……」
ひろきの言葉をきっかけに、てぃーだまで加わっておトキが死ぬ事を前提にした話を始め出す。
「こらっ!そこの三人!縁起でも無い話をするんじゃない!」
こんな事では埒があかない。
そこで、松田は四人を呼び寄せ、囁くような声で作戦を立て始めた。
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