しかも困った事に、シチローが今まで提示してきた推理は全て状況証拠である。


本人の自白が無い場合、指紋やDNA鑑定という決定的な物が無ければ、裁判でみどりを有罪にする事は極めて難しいのだ。


松田がシチローに耳打ちした。



「どうするシチロー?
こっちにある物的証拠といえば小島みどりの靴くらいな物だが、殺人の決定的な証拠にはならないぞ」


しかし、焦りを見せる松田に対してシチローは余裕のある表情で松田にだけ聴こえる声でこう答えた。



「決定的な証拠ね~
……それなら『証人』がいるよ。あの事件の瞬間を一部始終見ていた人間が」


「何!そんなバカな!
…一体誰なんだ、その人間ってのは?」




驚く松田に対して、シチローはとんでもない名前を口にした。














「それは、あの事件の当事者。『小島みどり』そして『岡崎美佳』だよ!」



「はぁ…何言ってんだ?お前……」



そんな事は当たり前である。


松田は、怪訝な顔でシチローの額に手を当てながら、首を傾げていた。