「遅いな……」


松田は少しイラついたように煙草を灰皿に押し付けた。


あれから、一時間近くが経とうとしているが、
馬場よしこの姿は見えない。


それに加えて、コンビニに使いにやらせたシチローまでもが、まだ帰って来ていなかった。


「シチローの奴、いつまでかかってやがんだ……コンビニなんてすぐ近くにあるだろうに!」


そう言ってルームミラーをチラリと覗くと、車の後方20メートル程の所をダラダラと歩くシチローの姿が確認できた。



「遅いぞシチロー!
何やってやがった!」


「いやあ~♪
今日、ジャンプの発売日だったんで立ち読みしてました♪」


「なっ!立ち読みって…お前、張り込みをナメてんのか!」


「だってオイラ『一般市民』だから♪
張り込みは警察の仕事でしょ♪」



松田のイラついた顔を見ながら、嬉しそうにあんパンと牛乳を松田に渡すシチロー。


「クソッ……」


そう呟いて、ふと大学の門に目を移した時だった。


「おっ!見ろ、馬場よしこが大学から出て来たぞ」


二人の表情が変わった。