教科書を保健室にとりにいって、教室まで運んでほしいと頼まれたのだ…。


保健室に向かいながら奈緒が愚痴をこぼす。

「なんで男にたのまんねん。うちらはか弱い女の子やのに。」

「同感ね。大体、3人で運べる量なのかしら?」

美香ちゃんも奈緒も細いから運べるか心配だ。

腕なんて簡単に折れそうなくらい細い。

「あっ!和紀〜。良いところに発見。」
と目の前を横切る男の子達をひきとめる。

「げっ、奈緒。」
心底いやそうに奈緒をみた人物が和紀らしい。
爽やかなスポーツ少年。モテそうな男子。

「『げっ』って何よ?幼なじみに対して失礼じゃない。ちょっと和紀、教科書運ぶの手伝って。」
と無理矢理和紀の手を引っ張りつれていく。

「わかったから手離せ。痛い。」奈緒の手を振り払い私達の方を向き、

「こいつの面倒みるの大変だろ?俺、同じクラスの山中和紀。まっ、よろしく。」爽やかな笑顔。やっぱりモテそう。

「大変とはどういう意味かな、和紀君?こっちは陽子でこっちは美香ちゃん。うちの友達。」

「「よろしくね。」」

奈緒って見た目に反してパワフルだな。

「俺の友達の大樹に亨。おまえらも運ぶの手伝えよ。」

「「よろしく。」」
大樹は身長が高い、なんか顔付きが怖い…。
亨のほうは逆に小さくて可愛いらしい顔付きだ。


まぁ、なんやかんやで皆で話しながら、保健室に向かい、そこにあるかなりの量の教科書に目が点になる。

この量3人で運んでたら死んでたなぁ〜。和紀君達がいて、よかった。


私が教科書の山の一つを持とうとすると

「そっちよりこっちのがいいんちゃう?」
と今持とうとしていた教科書より軽い教科書を和紀が渡してくれた。

「ありがとう。」
和紀君って優しい。
ジェントルマンだね(笑)

「どういたしまして。亨、そんな持って大丈夫なん!?」

そして、和紀は私が持とうとしていた教科書とその隣の教科書を持って亨君の方へ向かった。

「……亨君って案外力持ちなんだね。」
身長が美香ちゃんと変わらないのに教科書は美香ちゃんの倍以上持っている亨をみて、美香ちゃんが驚いていた。

「みんな、はよいくで!」

という奈緒の声で保健室をでて、教室へ急いだ。