あの時の どうしようもない


ひとりぼっちの感覚が


もう少しで私を飲み込むところで




立ち上がった柊ちゃんが



ふわっと私の前髪をよけて



私の額に手のひらを当てた




「熱、高いよ。帰ろう」



ひんやり冷たい柊ちゃんの手



私を心配する声




私は もう ひとりぼっちじゃないのに




「帰ろう、結」



柊ちゃんが優しく私の腕を掴んで



引き上げる



ずっと座ってたし


ひざが固まったみたいになって


よろけると


柊ちゃんは
しっかり私を抱き止めて




「大丈夫か?」



「先生」



私は柊ちゃんに しがみついて



「先生、藤代先生は覚えてる?」



「………え?」




「私、ここで先生に好きって言ったんだよ………」



ここから私たち始まったんだよ



「覚えてるよ。忘れるわけない
忘れられないよ」



いつもより 少し低い声に聞こえた



柊ちゃんは そのまま私を抱き上げて



公園のわきの道に



駐車してある車の助手席に私を乗せて


シートを倒して寝かせた