6月
「結、覚えてる?
ここで結がオレに告白してくれたんだよ?」
結が 育った養護施設のそばにある
小さな公園にふたりで散歩に来た
「オレ、すっごく嬉しかった」
青々と茂る木々の緑が
初夏の風にざわざわと揺れた
人目につかないベンチに座ってたのに
「あら、可愛い」
通りすがりの女性がオレ達に声をかけた
「可愛いわねぇ
娘さん?
何ヵ月ですか?」
オレの腕の中の結を見て
そう訊いた
「いえ、娘ではなく妻ですよ
こう見えて二十歳なんです」
オレがニッコリ笑って答えると
ギョッとした顔して
後退り、早足で逃げて行った
女性が去って行った方を見て
「何あれ
ねぇ結、めちゃくちゃ失礼だよな?」
腕の中の結の顔をのぞき込むと
眉をしかめて
口をモゴモゴ動かした
結は もう何も言わない
赤ちゃんだった