ダメだ
耐えられない
「柊」
机にひじを付き
頭を抱えた時
……ポンポン
高野先生がオレの肩を叩いた
「大丈夫か?」
「………大丈夫です」
オレは席を立ち
職員室を出て
化学準備室へ入り
鍵をかけた
ジーンズのポケットから
ケータイを取り出して
ボタンを押す
耳に当てると
……トゥルルルルルル
……トゥルルルルルル
早く 早く 早く
「柊ちゃん?」
耳に届く幼い子供の声
オレの大切な人の声……
「結?」
「どうしたの?」
「うん、今、昼休みでさ
結の声が聞きたくなって」
キャハハって笑う結の声
子供の笑い声って
すごく特徴がある……
「甘えん坊だね、私の旦那サマ」
「うん…。結、大丈夫?
何か困ってない?」
「ダイジョーブだもん」
「そっか。じゃ…また」
「うん」
短い電話
結の幼い声
ズルズル……っと
しゃがみ込んで
ケータイを両手で握りしめた
結、愛してる
結の声は オレの黒い心を
柔らかく照らしてくれる
どんな姿でも いいよ
そばにいて――――――――