「いいか?何もするなよ?」



「わかったよぉ」



学校に行く前



玄関で 何度も何度も
結に確認する



「掃除とか危ないからな」



「はい、はい」



結は つまらなそうに
小さな爪先を
モジモジ重ね合わせてた



「お昼はテーブルにお弁当置いて…………」



「わかってるよぉ
柊ちゃん遅刻するよ?」



上目遣いにオレを見て………って
当然だ



身長差が約50㎝だ



毎朝、不安なんだよなぁ



結はオレの奥さんだけど



小さな子供を長時間 留守番させるキモチになる




「……じゃ、行ってくる」



「柊ちゃん」



「うん?」



「早く帰ってきてね」



ニッコリ笑う結に



「うん、1秒でも早く」



ひざを折り 思いきり かがんで



キスをする



「んふふ」って
結は満足そうに笑い


「行ってらっしゃい、柊ちゃん」



そんな結を見て



オレは



毎朝、後ろ髪 ひかれる思いで
家を出る