柊ちゃんに背中を向けて
「…ちゃんと目を閉じてる?」
「閉じてますよ」
湯けむりで霞む向こうには
さっき行った川が見えた
空を見上げると
月と 少しの星が見えた
「…月が綺麗だね」
柊ちゃんの言葉に
「うん」と うなずくと
え? 月が綺麗だね?
柊ちゃん まさか 目を………
そう思う瞬間に
お湯が揺れて
私は背中から柊ちゃんに捕まった
抱きしめる腕に手を置いて
「柊ちゃんの嘘つき」
そう 呟いたら
「うん」
さらに きつく私を抱きしめた
「……あまり、見ないで……
私、変わっ……」
「オレは結が好きだ
いつでも、目の前にいる
ありのままの結を愛してる」
柊ちゃんの言葉に
目の前がゆらゆら滲んだ
「結は綺麗だ
ドキドキする」
目を閉じると
涙が こぼれた
「ありがとう、柊ちゃん」
照れ屋の柊ちゃんが
こんな こと言ってくれる
「ありがとう、大好きだよ
柊ちゃん」
私は何度も言って
柊ちゃんは
ずっと私を抱きしめてた