「寝ても いいよ」
車を走らせながら
柊ちゃんは言った
「着くまで、まだ2時間くらい かかるし」
出発前に柊ちゃんが 掛けてくれた フリースの膝掛けを触りながら
「うん」って うなずいた
柊ちゃんが急に旅行へ行こうと言い出して
9月の連休に温泉へ一泊することになり
「道、渋滞してなくて良かった」
呟くように 言った
柊ちゃんの言葉に
うなずきながら
シートの背もたれに深く寄りかかり
フロントガラスの向こうに広がる
真っ青な空を目を細めて見つめると
うとうと眠気が襲ってくる
「ふわぁぁ~」
あくび が出て
しまった と 口を両手で隠すと
柊ちゃんはクスクス笑って
左手を伸ばし
私の右手を握って
「おやすみなさい、結さん」
私の膝の上で繋がった手
血管が浮き上がった
大きな男らしい手を見つめて
なんだか安心した気持ちになって
私は 眠ってしまった