私は、たけちゃんの顔をずっと見た。



たけちゃんのこと私、全然知ってなかった。



昔から一緒にいたからもうたけちゃんの知らないとこなんてないと思ってたんだよね。



高1になって「また野球好きになれ」とか「野球のこと悪く言ったらぶっ殺す」とかこんな奴、人の気持なんか全然わかってないサイテーな男かと思ってた。



…でも間違ってたよ。


たけちゃんは自分のほうが大変で自分のことを心配しなきゃいけないのに、私の昔野球やってた時のうれしさをまた教えてくれるようにしてくれて。



ほんとのたけちゃんは、ものすごく優しいんだね。



私はたけちゃんの顔を見てさっきよりも涙がたくさん出てしまった。


「うっ…、ふぇっ…っ」


「柚ちゃん、泣かないで。健は柚ちゃんのおかげでまた野球が出来るようになったのよ」


えっ…?どうゆうこと…?



「そ、それってどういう意味ですか?」



「え、聞いてないのね。この子1回今みたいに肩を壊したことがあったの。それで病院に毎日通院してリハビリをしていたの」


たけちゃん、そんなこと私には言ってなかった。



きっと言わないようにしていたのかも…




たけちゃんは優しいから。





「でね、それからリハビリが終わってまだすぐにはボールを投げれないって医者に言われたのにね、健はすぐにボールを投げれるようになったの」



なんで?すぐになんて投げれないのに…