「斎藤君のお母さんですね?わかりました。車に乗ってください」


たけちゃんのお母さんが病院の人について行った。


そのとき、たけちゃんのお母さんの足が止まり、私のほうを見た。


「柚ちゃんも来てくれない?」


「え…あ、はい。」


私はたけちゃんのお母さんについて行った。


そして、車に乗って病院へと向かった。
 

寝ているたけちゃんを前に私が座り、しばらく黙っていると



「健、この日のために部活が終わった後もずっと1人で練習してたのよ」


たけちゃんのお母さんがしょうがなさそうに言った。



「それで、監督にまでやりすぎだって言われたのに練習をしてたの。」


なんで…?


なんで、そんなに…


「でね、健になんでそんなに懸命に練習するのってきいたら…」


お母さんがこっちを向いて、


「1年前の試合で負けたとき、俺は柚に野球をもう1度好きにさせられなかった、と思ったのに柚は負けた試合なのに野球を心から好きになってくれた。」



「だから今年は、前の試合より一歩進んで柚をもっともっと野球を好きにさせてやりたいんだ。って言ってたの」



そうだったんだ…


そんなことまで思ってくれてたんだ…