君に出会えた奇跡…


「うった…うそ…」


たけちゃんが打ったとこ初めてみた。


「ピーーーーーー!」

試合の終りの笛が鳴った。


そして、たけちゃんたちのチームが



4対2で勝った。




「柚!健達のチーム勝ったね!」


「う…うん。」



「じゃぁ、教室もどろうか」


行こうとしたとき…


「柚。」



ギクぅぅぅぅぅぅ!!!!



「な…なんでしょうか…」



「約束」


「ちゃんと野球好きになれよ?」


「でも、どうやって…」


「じゃぁさ、夏の甲子園に出るための試合すっから
柚も見に来いよ。」



「うん。わかった。」




「見ればきっと野球好きになるぜ。」


そういって、教室に帰って行った。




キーンコーンカーンコーン…


「柚ー!一緒に帰ろう!」

菜奈がいった。


「うん!」


こうして、私たちは校門を出た。


「ねぇねぇ、柚ってさ」


「ん?」


「夏の甲子園行く?」


「うん…なんかたけちゃんに来いって言われた。」


「そうなんだぁ~、うちは佑真に誘われた。」


「そっか、幼馴染だもんね。」


菜奈と佑真は幼馴染。

で、家もうち達(柚&健)と二人の家が近いし

親たちも仲イイんだよぉ~。


「そいえば、佑真から聞いたけど
健と佑真は1年なのに
ピッチャーとキャッチャーなんだって」


「えーーーっ!まじで!」


すごっ…


凄すぎる…


あの2人いつのまに…





「で、柚はどうなの?」


「なにが?」






「今日、健達の野球見てみて。」





━柚━

今日、菜奈に「たけちゃんの野球見てどうだった?」

って言われた。


なんか、あのとき久しぶりに「野球」ってもの

久しぶりに見た。


何回もピッチャーが1球1球一生懸命投げて、



それをバッターが1球1球見て打って


それを目で自然と追っていったら


試合が終わっていた…


みたいな(笑)


でも、なつかしいきがする…


たけちゃんのホームラン…


気持ち良さそうだったし…





まぁ、野球嫌いなのには




訳があるんだよね…










━第二章…━









ー辛い過去ー…





私は小学生の時に野球のクラブチームに


入ってた。


もちろん、たけちゃんも佑真も菜奈もいた。


毎日がすごく楽しかった。


そして、小学校最後の大きな試合で

私はグラウンドに立って


ボールを打つ出番になった。


「プレイボール!」


審判の声の合図によって


試合は始まった。


「パンっ!」


「ストライク2ー」


ラスト1回、

そう思ってバットを構えたとき


「バンッ!!」


私は強い投球を



顔面で受けた。


その時、何が起きたか


わからない状態でただ、



「バタッ…」


倒れた。


「柚ー!」

みんなの声が聞こえる…


「キャーーー!」


お客さんの叫び声も聞こえる…



いったい自分がどのようになっていたのか



全くわからなかった。






私が目を開けたとき、


そこはもう病院だった。


「柚、大丈夫か?」

たけちゃんがいた…


「たけちゃん、私は今どうゆう状況なの?」


なんで病院にいるの?





なんで…?





なんで…?




「柚、お前は試合でバッターだった時

相手のピッチャーが審判の合図を

見ずにボールを投げたんだ。

それが運悪く顔面にあたって

血が大量に出て、病院に運ばれたんだ。」



その話を聞いた時、自分の頭に何か巻いてあることに

気づいた。


「頭に包帯が巻かれてあるのは、顔面にボールがぶつかって

その衝撃で後ろに頭から落ちたんだ。それで、血が出たんだ。」




そうだったんだ…



なんか信じられないな…



野球でこんな大けがするなんて…


「それにな…柚。」


たけちゃんの顔が険しくなった。






「たけちゃん、どうしたの?

すごく顔が険しくなってるよ?」


私は、嫌な予感がした。


「あのな、柚、お前はこれから

野球ができないかもしれない」


え……


うそでしょ、たけちゃん…


そんな冗談…


「だけど、リハビリをがんばってすれば

きっと野球できるから…」



たけちゃんはそう言ったけど



「ポロッ…ポロッ」


私は自然と涙がでた。


だって、野球は私にとって1番楽しい事

だったから…




中学生になっても高校生になっても

ずっと、やろうと思っていたスポーツ…




「な…んで?」


「なんで?たけちゃん、

私野球大好きなのに…。

ずっとやろうと思ってたのに…」


「柚…」


「ウェーーーーンッ、な…んで」


思いっきり私は泣いた。


医者にはリハビリで治ったとしても


「もう一度同じことをしたらもうどうにも

できない」と言われた。

こうして、私は頭のリハビリを


毎日、嫌ほど続けた。




そして体もなまっているといって


上下半身とも軽い運動を行った。






━その後…━






「柚!退院おめでとう」



菜奈と佑真とたけちゃんが来てくれた。


「うん。ありがと」




私が退院したのはあれから1年たって




もう中学生になっていた。




こわかった…




新しいクラスに入るのが、夏休み明けなんて…



いくら菜奈と同じクラスでも皆と一緒になじめるか




心配だった。






クラスにはなじめたけど


多分、ソフトボール(女子はソフトボール)

は無理だろうと思った。




やりたいけど、やったらまたどうなるかわからない。


軽いピッチングはできるが


試合なんて絶対無理だ。


まず、親がやらせてくれない。


菜奈はソフトボール部に入ってたから



同じ部には入れない。




だから私は吹奏楽部にした。




部の子たちはみんなやさしい。



今でもいい思い出になっている。


それに、いつでもボールの音やボールを見るけで


私は心が苦しくなった。


もうこんな事したくない。

こんな思いしたくないと思った。



そして━


私は野球を嫌いになった。


野球は恐ろしいもの…



私の将来を壊したもの…

将来だけじゃない。




私のすべてを壊したんだ。