相沢くんの周りの声が聞こえないところへ行こうと、私は廊下に出て適当に歩いた。



「あ、藤沢! コレ、相沢に渡しといてくれ」



先生は私に用紙を数枚渡した。



「遅刻の反省文、しっかり書かせといてくれ。頼んだぞ」

「え、あ…はい」



私は、先生から預かった用紙を持って教室に戻った。


参ったな…、
できるだけ接触は避けたいのに。

でも、さっきのお礼はちゃんと言いたいな…



私は相沢くんの机の前まで行った。

すると、タイミング悪く、チャイムが鳴った。



「うわ、次現国じゃん」
「だりぃ」
「寝よ」


今がチャンスだ!
サッと御礼を言って席に戻るだけ。
サッと御礼を言って、席に戻るだけ!

相沢くんの周りにいた人たちが席に戻って行く。


相沢くんの前に棒立つ私の足は、身体はまた動かない。


数秒目が合い、



「何?」

「あ、あのコレ…」



私は、赤面して行くのを瞬時に察知し、
俯いて無愛想に当初の目的は果たせずに、

先生から預かった用紙だけ渡して席に戻った。




何、それ。

ちゃんと説明も出来てないし、お礼も言えなかった。

コレじゃ、挙動不審…。


はぁ…。


私は席で大きくうなだれた。