「なん…で…?」 息を切らしながら、荻野さんが私に傘を差し掛けてくれた。「荻野さん、仕事行ったんじゃなかったの?」 「行ったよ。でも何でだろうな。涙溜めて走って行くお前の姿が頭から離れなくて、仕事に集中出来なくて、帰ってきた。」 「荻野さん、もしかして私の事、好きになりかけてるとか?」 「ねぇーよ!」 うっ…そんな、即答しなくてもいいのに…。何か、傷口に塩を塗り込まれた様な感じだ…。 「でもな、お前の悲しそうな顔を見たら気になってくるのは確かだ。」