ヤダ…助けて荻野さん。 私の声なんか届くはずもない。 唇が離れた。「…にすん…のよ…。」塗り直したばかりの唇をゴシゴシと腕で拭いた。 「ごめん。ホントにごめん。」そう言いながら何度も何度も頭を下げていた。 「もう、いいよ…。ただ私も突然だったからビックリしただけで…。私、帰るね。」