履歴書もまだ出していないのに…インチキな会社……。

でも、貧乏学生の身である限りは四の五の言ってられない。


「はい!明日からでも直ぐにやりたいです。よろしくお願いします。あ、履歴書です」


「先に出してよ」


「………すいません」


「あれ、今大学3年生?」


「はい」


「後藤君が担当する事になるアーティストもね、永沼って言うんだけど…確か大学3年生の筈だよ。」


「そうなんですか?じゃあ話も合うかな…」



同学年かよ。
でもまあとりあえず一安心。

だってクソ生意気なおっさんアーティストとかだったら嫌じゃないか。


せいぜい大学のスクーリングの時の話のネタにしてやろっと。



馴れ合いとか和気藹々となんて嫌だね。

だって音楽とかやる奴なんかロクでもない奴なんだろうからさ。



「後藤君、それじゃ明日からよろしくね。これ永沼の資料だから見ておいて。明日は学校終わりは何時?」


「えっと自分今スクーリング中なんですけど、15時には終わるんでここには16時には着けます」


「じゃあ16時に来て。早速だけど春山が明日オーディションだから」


「はい」



「それじゃ今日はご苦労様。もう帰っていいからね」


「失礼します」


ドアを閉めようと振り返るとオカルト女は俺の方をチラッと見てニヤリと気色の悪い笑顔を向けた。


ロクな会社じゃねえな。








永沼武蔵、21歳、工業大の3年生ね…。
頭いいじゃねぇかっ!!


なんかすごいムカつく。


通信大の俺とはエラい違いだこと。


自分の家に帰って、俺はベッドに横たわり渡された資料を見ながらながらそんな事を考えていた。