「よくできました」

そう言って深いキスをしてやる。


「ん……っ、まーくんっ……」


これじゃあ2人共に泥沼じゃないか…と。
思ってても


もう手放せない。










薫ちゃんが帰宅したのは既に夜中を回っていた。


「お帰り」


「あっ、起きてたんだ?ただいま」


そんなに足音消してどうしたの?

何かやましい事でもしてたから?


「ん……あのさ、福ちゃん」


「なに?」


その顔は何も知らない振りしての笑顔?

「何処行ってたの?電話、何回もかけたんだけど」


「……いや、友達の所」


嘘をつくのが下手だね。
そんな顔をしてる薫ちゃんが痛々しい。

でも、今日という今日は許さないよ?


俺にだってプライドがある。


絶対に渡したくないんだよ。



一生閉じ込めておきたい位だよ。



「友達って?」


「……………あの」

「携帯貸して?」


自分は何で嫌な奴なんだろう。


こんな事してたらますます薫ちゃんが遠くに行ってしまうのに。
でも薫ちゃんは泣きそうな顔をして結局自分の携帯を渡してくる。



結果は明白


「後藤かよ……」

「ごめんなさい」


「何で?」


「ごめん…な…さいっ」


空気が張り詰めて痛い。


俺は今どんな醜い顔をしてるんだろう?

「だって…まーく…あっ………」



まーくん。


後藤、ぶっ飛ばしてやりたいね。


俺の薫ちゃんに何をしたの?
何の話をしてるの?

薫ちゃんは俺以外の人の前でどんな顔をしてるの?


嫌だ!


「わかったよ…もういいよ」


「福ちゃん?」


服の袖をぎゅっと掴んでくる。

怯えてる時によくする仕草。

ごめんね。
怖いんだね。