イライラしてる俺と楽屋のキリキリした雰囲気を察してなのか、珍しく武蔵が後藤に意見した。


薫ちゃんは今にも泣き出してしまいそうな顔をしてオロオロしていた。


可哀想な薫ちゃん。

お前のせいじゃないのに。ごめんな。

でも、どうしてそんな目で後藤を見るの?


「はいはい、わかったよ。お前、次ヘマしたらぶん殴ってやるからな」


「はい」


悪態をつきながら後藤達は楽屋を出て行った。

出て前に武蔵が俺にすまないと言うように目配せをしてった。


いきなり楽屋はバツが悪そうな雰囲気になる。




「最近、後藤と仲良しなんだね」

「えっ、仲良しって…そんなんじゃないけど…」

「けど?」

「……まーくんはそんなに俺の事は好きじゃないと思うよ」

薫ちゃんは悲しそうな顔をして頭をうなだれて呟いた。


このまま追求したいけど、もうすぐ出番の時間が押し迫ってきていた。


「ほら、もうすぐ出番なんだから急ごう。」


安心させるように後ろからそっと抱きしめた。


「うん。ごめんね」

甘えるように俺の腕にすがりついてくる。


このまま気持ちを押し付けたいのに。
誰にも渡したくないのに。




俺には勇気がない。


後藤のようにはなりたくないけど、あいつみたいに余裕があればいいのに。



俺は薫ちゃんを幸せに出来るのだろうか?