「はい!次のコーナーは新人アーティストのコーナーです!」

「新人ってピチピチばっかしなんすかぁー?ギャハハハ」



ヤバい………。

俺ったら今になって後悔してるかも。


でも今更逃げれないし。

絶対に顔赤い…よな?


マジで終わったな。


「サンドラさん、どうぞ出て下さい」

「はい」


学生かなと思われるアルバイトさんの合図にとりあえず一応頭を下げる。


足が…足が…震えてしょうがない。



そんな時、俺の背中を撫でてくれた優しい手。


大丈夫かな…?


じゃあ行こう。




「初めましてー!サンドラでーすっ!」


『distortion』




「だっ…駄目だった…ごめん」


出演者が何組もいる控え室に出番が終わったばかりの俺達はいた。

出番が1番だったからまだ当然控え室には誰もいない。
皆、舞台袖で出番を待っている筈だ。



今日来ているのは新人専門のライブ。

レベル的にはインディーズが主体で、後は俺達みたいな事務所に入ったはいいけど全くライブ出演実績がない奴等を集めたライブ。
それに客よせゲストミュージシャンが何組か出る。

こんなライブでもお客さんの数はかなりいる。

バンドブームって直ぐに廃れるかと思いきや、結構人気は続いていた。


「ごっちゃんは今回が初めてなんだし、まぁ仕方ないよ?元気出して」

「ごめんな…次はもうないかも」

「んな事ないよ。初めから完璧に出来る奴がいたら逆に教えて欲しいって」


衣装である水兵のセーラー服を着た相方はこっちが申し訳ないと思う位に俺を慰めてくれる。

(足手まといじゃなかったか?)

(見捨てるって思ったら直ぐに見捨てて貰っても構わないからな。)



自分でやってみて駄目だなって思ったらこれを言おうって思ってたんだけど、それすら言えない。

見捨てて欲しくないから…かな?

自分にプレイヤーとしての才能なんかないってわかってる癖に、まだそれでもやりたいのか…?


そんなぐちゃぐちゃな思いが俺の頭の中をぐるぐると駆け巡っていた。

思考回路が落ち着かない。