「ひいィ！違います、おまわりさん！私は信号無視などしていません」
「貴様、本官に嘘をつくつもりか！偽証罪だぞ！」
「いいえ、そのような！私は信号をきちんと見ていたのです！ですが、見た上で赤信号を直進しました。無視というと、見ていない、といった印象を受けますが、見た上で指示に従わなかったので、なんと言えばいいのでしょう？」
「死刑だ！」
警察官は引き金を引いた。男の後頭部から、いろいろなものが後ろに弾け飛ぶ。
エリザベートはフラフラと警察官にむかって歩いていった。彼女の思考は、正常の動きをしていなかった。
「ねえ売人さん、ヤクを売ってくれよぅ」
「ん、なんだね君は？」
運転手に意識を集中させていた警察官は、そのとき初めてエリザベートの存在に気がついた。