(動物たち、今すぐ逃げるのよ・・・高いところへ・・・高い、人間が来ることのできない、山の高いところへ)
(ああ、エリザベート、エリザベート・・・)
(衛、アナタにも注射を打ってあげましょう・・・とても、素敵な夢が見れるから・・・さあ、動物たち、急いで、山の高いところへ・・・)
赤くなった空から、人間の女と男の声が、タヌキたちに届いた。
「子狐よ。今の声をみなに知らせるのだ。今すぐ、峰を目指して移動するぞ」
「はい!」
子狐は仲間たちが隠れる洞窟に向かった。
タヌキは赤く染まった空を見上げ、おそるおそる尋ねた。
「あなたたちは、いったい何者だ?」
(シャワーヘッドを持って逃げて。それがなくては、シャワーを浴びれないもの・・・)
(そうだ・・・正しいセックルの後にも、シャワーは浴びなければならない・・・)
「さっぱりわからんが、ありがとう」
タヌキはシャワーヘッドを手に、仲間たちと、村を離れた。
空を染めていた赤が消え去ったとき、村は、わずかしか光の届かぬ、朽ち果てたダムの底の姿にもどってしまったのだった。
もうここには、動物も、シャワーヘッドも、無かった。

                     おわり