「ゲーッ！」
タヌキは悲鳴を上げた。そして、驚きのあまり体を仰け反らせ、「ゲーッ！」ともう一回叫ぶと、尻餅をついて石から滑り落ちた。大地にお尻から落ちた彼は、体をわなわなと震わせながら子狐を指差した。
「子狐よ、その言葉をどこで聞いた？」
動物たちの指導者であるタヌキ爺の非常な驚きように、子狐は、自分がとんでもないことを言ってしまったのではないかと心配した。
「村に行ったとき、人間が言っていたのです。うちのシャワーヘッドが壊れたから、新しいものを買わないと、と」
「まあ！お前は人間のところにいったの？」
子狐の横にいた母親キツネは驚いて我が子を見た。
「あれほど人間のところに行ってはいけないとお母さんが言っているのに！」
子狐は母親を見上げると、不服気に言い返した。
「でもお母さん、何日か前から、村の人間は、みんないなくなってしまったよ。僕が話を聞いたのは、外から来た人間なんだ」