永浜悠は私たちのやりとりを楽しそうに見ていた。
「悠、楽しそうね」
「陸が人と喋ってるの、久しぶりに見た」
「え?」
永浜悠はそれ以上話さなかった。
菓子パンとオレンジジュースで腹が満腹になったのか、満足そうに伸びをすると寝っ転がった。
秋特有のひんやりした空気の中に、暖かい日差し。
日向ぼっこには最適で。
「そのまま寝ると、学校終わるまで寝ちゃうよ?」
私の言葉は奴に耳に届かなかった。
すでに寝息をたてている。
まぁ、いっか。
いつものことだし。
「山川…だっけ?」
「なに?」
「浅木で良いから。俺も山川って呼ぶ」
「そう。浅木は…いや、なんでもない」
あまり詮索するのはやめよう。
ただ、さっきの永浜悠の言葉が引っかかっただけだし。
結局、午後は屋上でサボり。
いつもと違うのは、浅木陸が増えたこと。