「で?話って?」


「とぼけないでください。綺羅のことです。綺羅から手を引いてください。」



中村はふーと息を吐いて答える。



「一回じゃ無理だな。」


「…一回?」



あたしは拳を握りしめた。



「俺は山川を助けたんだ。見返りを求めてなにが悪い?」


「あんた、それでも教師?先生が生徒助けんのなんて当たり前じゃん!」


「おまえ等だって俺の事呼び捨てにするくせに、今さら教師だぁ?困った時だけすがってくんじゃねぇよ。」



普段の中村とは全く違う。



「なんなの…それ…」



あたしは言い返せなかった。



悔しくて。



あたしは唇を強く噛んで下を向いた。



「…綺羅が泣くから、」


「は?」


「綺羅をもうこれ以上泣かせないで!辛い想いをさせないで!お願いだから…」


「じゃお前がなんかしてくれんの?人はなぁ、タダじゃ動いてくれねぇんだよ。覚えとけ。」



中村はそれを言うと教室から出て行った。



あたしは自分の無力さを思い知った。