父ちゃんはそれで十分だと言って、一粒の泪をこぼした。



それは間違いなく暖かいモノだった。



「一つ、お願いがある」


「なに?」



父ちゃんはポケットから一枚のメモをだして、俺に渡した。



「悠に逢いに行ってほしい」




なんで?

なんのために?



「なんで…」



「父として、なにもできなかったから…。悠には友達がいないんだ。せめて、最後に…」



「浅木さん!!」



「え?」



「母ちゃん?」




母ちゃんは、ボロボロ泣いていた。



肩で息をして、父ちゃんを睨みつけている。



「…とりあえず、家に行きましょう」