突然ですが私はここで「千と千尋の神隠し」への私淑を宣言しなければなりません。

 というのも、ユイが喜びの中で悟った、『祝福と激励』とは、さも同作に追従するように、『まず証拠は残らないけれど、きっと誰もが経験し証明した「生きる力」である』と確信するからです。


 ふてぶてしい大人達は忘れてしまったに違いありません。

 「自分はここに居て良いのか」という不安と、
 「貴方はここに居て良い」というエールを…。

 「自分は生きゆくんだ」という勇気を…


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 ―――

 下校途中。

 突然、美幸さんが、まるで雨垂れの中の猫のように
 「ユイさん…あのね」
 と口を開きました。

 ユイは持て余した傘を振り回しながら笑いました。
 「うんうん。いいんだ!もう」
 さっきまでの夕立は夕焼け空と冷ややな風を置き土産にして嘘のようにさっぱりと立ち去ったのでした。

 「えっ…いいって?」
 夕焼けに、明るく染まったユイの髪とは対象的に、美幸さんの黒髪は半ば意固地に思えるほど真っ黒を保っています。

 「だから! 夢なんていいの!」


 「やっぱり、ユイさんも見たんですね…」