そのあまりの静寂に、ユイは泣く事さえ忘れていました。
 
 渋谷の交差点の真ん中。ビルはほとんどが倒壊していて、街頭は押し並べて黙祷するかのように消灯しています。

 

 ……と、ユイは自分が何かを握っている事に気付きました。
 
 「………?」
 掌をゆっくりと開くと、そこには『指輪』が輝いていました。必死に伸ばした指が掴んだのは、彼の手ではなく、その『指輪』だったのです。
 「…っ……」
 二人を巡り逢わせ、そして穿いたその指輪は月光に煌きました。
 いえ、それもちっとも美しくない光で…。誰がその輝きを「美しく」など形容できましょうか。
 

 少女はじっとそれを見つめ、それから――

 「…先輩……っん、うっ…」

 少女は天を仰いで、それから――
 
 「うっ…うっ…あぁ、うぁぁああん!!」
 大声で泣き出しました。