届かない。
 どんなに背伸びしても、間接が外れるほど指を広げても、その竜一の落ちた穴には、手が届かない。


 なぜ、竜一はそのとき、差し伸べられたユイの手を握らなかったのか。

 ―― バカやろうが ――

 なぜ、意固地になったのか。なぜ、星になる道を選んだのか。

 
 …けれども、少女は諦めませんでした。

 ユイは膝を曲げて身を低くしました。堪えた涙がピタピタとコンクリートに滴りました。
 「お願い……」
 と、そう一言呟いて、全身のバネを開放します。

 「届け!!」
 ユイは跳びました。
 
先ほどまで自由に空を駆ける戦士だったとは思えないほど、無様で小さなその飛翔が、これほどまでに優しく尊く感じられたのは、我々だけだった事でしょう。

 少なくとも私には思えました。
 「少女は跳びました、高く高く」…と。