ユイを、この物語に関わった全ての人々が呼んでいました。

 「走るよ、走るから…。泣かないで、ママ…。美幸…」
 

 無限の可能性の海には無限通りの生き方があったでしょう。波動性を持った存在はもっと自由な選択を持てたのです。幸福だけのエデンも得れたのです。少年が望んだ優しさの園を育む事もできたのです。

 けれども少女はひたすらに走りました。
 
 ―― ただ…
 ―― ただもう一度、あの少年に出会うため


 「名前を呼びたい。“先輩”なんかじゃなく…。アナタの名前を…!!」


 ユイが道を見失いそうになるたび、太陽は光の道を示してくれました。諦めそうになるたび、誰かが呼ぶ声が聞こえました。
 
 「ありがとう…ありがとう」
 ユイの涙は感謝のそれに変わっていました。

 そして……
 あの星で生きていくのだ、とユイは思いました。
 
 
 そうだ、全てはあの星の出来事。