その赤い星は『火星』。

 軍神の名を冠した猛々しいその星でさえ、姪となる『アポロンの娘』を励ましているように思えました。
 「がんばれ、あと少し。あと少しだ」と。


 あと少しです。 
 しかし、ついに現れた最後となるその惑星を、ユイは正視する事ができませんでした。
 「“先輩”…“先輩”……!!」
 溢れ出した涙のせいでその星は歪んでしか見えなかったのです。

 
 「ごめんね…。ワタシ、どんくさくて…」
 ユイは幾千の涙の流星を従えながら、しかし立ち止まる事無くなおも進んでいきます。
 「待ってたんだよね、ずっと…。 今、行くからね」