ユイは多くの声を聞きました。もう星という象徴は必要ありませんでした。
 多くの声が彼女の内から湧き出し、同時に外部から与えられていました。様々な記憶が鮮やかなフラッシュの下に描き出され、愛し愛されるという人を人足らしめる心の要素が彼女を定義していきました。

 ユイとユイの宇宙の99%は再構築されていました。
 
 「ハァハァ…んッ…」
 だからこそ、疲労や苦痛は生の感覚となって彼女を襲います。
 
 けれど、彼女は走り続けました。

 「大丈夫、大丈夫だから。泣かないで、達っちゃん……」
 自由こそが宇宙と生命との約束というならば、諦める事も出来たはずです。現に、我々のほとんどは諦めた人々でしょう。

 「ママ、分かってる…大好きだよ」
 いえ、はじめから、運命は変えられないのかもしれません。 

 「美幸…、今度ドーナツおごるからね…」
 けれど、彼女は走り続けました。