“彼はまだ、10歳だから”と、『木星』は言ったのです。

 ――!!
 そうだ、とユイの中で小さな歯車が噛み合いました。

 
 「ユイ、走って…!」
 間髪置かずに、衛星は言いました。
 
 …いえしかし、そう聞こえただけです。その声はもう星の姿を借りずとも、ユイの耳に届いていました。


 ユイにはその声が分かっていたのです。
 「美幸……! うん…!」
 ユイは砕けそうになる全身の間接に鞭を振るって走り出しました。



 「アナタ次第で…『2年』早く出会える」
 『木星』からの声はQであり…そして次には美奈子でもありました。
 「“彼”は…ずっとアナタを待っていた。前の宇宙からずっと、ずっと海辺でアナタを待っていた。 嵐が来て……孤独と闇の大波に自分が飲み込まれてしまうまで、海辺でずっとアナタを待っていた」

 「お願い…走って…!! ユイちゃん……」