『2年』早く出会いたかった。
 『2年』早く生まれたかった。

 ――何故だろう?

 ユイは湧き上がるその感情だけを酸素にして、宇宙の真空を走り続けました。

 ――何故だろう?

 『2年』早く生まれる事にどれほどの意味があったのか?
 こんなにも辛い思いをしても得るべき『2年』なのか?
 宇宙の長い長い一生からすれば、ほんの刹那の『2年』…
 一瞬の午睡で過ぎ去った『2年』……

 ――『2年』……
 
 ――『2年』……!!

 ユイは本当によく走りました。『2年』が持つ意味も分からぬまま、よく走りました。
 ……が。
 遥か次の停泊場に至ったとき、いよいよ意味を持ったその数字は、あるいは彼女にとって残酷過ぎるものであったかもしれません。
  


 「ハァ…ハァ…。がんばったでしょ。わたし」
 
 ユイは、眼前に迫っていた『木星』に言いました。膝に手を着いて、息を整えます。 
 「ま、待ってよ…すぐ走るから」