「へ? ポセイドン?」

 ユイはまるで、『かつて受けた理科の授業』のときのように、頭を掻きました。
 彼女は急速にその姿を、“人のそれ”に同期させていきました。

 「…な、何言ってるの?」

 ユイの頭は冷水を浴びたように、一挙に澄んでいきました。
 
 まず、自分が制服姿であることに気付きます。
 そして前方から彼女を照らしている光が、我々が“最も見慣れた光”である事も。

 「え…あれって……?」

 その若干の“黄色スペクトルを持つ陽光”は、まるで彼女を手招きしているようでした。
 
 
 「ねぇ、アレって!?」
 

 しかし大きな青い惑星はそれには答えずに、ユイが目覚めたのを認めると、ゆっくりと去っていくのでした。

 
 「待って!」

 
 「急げ、時間が無いぞ?」
 背中(があるのか?)越しに、その青い惑星は言いました。

 「へ、急ぐ? えっ、えぇ!? あ、あなたは?」

 
 「人は私を、『海王』と呼ぶね」
 そうとだけ言うと、青い惑星は―――
 「ではでは。 160年の旅が私を待ってるので」
――と、気さくに笑って去っていくのでした。