【お前には星を創るなんかより、もっと大切な役目があった】

 “彼”は言いました。
 
 【戦うなんかより、もっと大切な役目があった……『ユイ』?】


 「!!」
 少女は息を呑みました。
 
 そうだ。そうだった。自分は……
 自分はかつてユイと呼ばれた子供だった。

 溢れ出した涙は無重力に漂い、唯一の質点であるユイを軸にして、公転を始めます。

 体育座りで宇宙を漂うユイと、その周りを廻る涙はさながら、小さな太陽系のようでした。

 1千億年の時間を与えられて、少しずつ少しずつ原子達がユイに引き寄せられ、あるいは彼女を核にした新たな太陽系が生まれるかもしれません。
 


 一兆年の孤独……。


 けれど、愛し愛された記憶は、このユイという名前に繋がっている。

 ユイは宇宙を漂いながら思いました。

 かつて愛した。かつて愛された。
 それを思い出させてくれただけで、私は一兆年の孤独にも打ち勝てるだろう。

 私は『藤間ユイ』。
 私は、その名前を失わなければ、私は、大丈夫……