でも、幼いまま白骨化する運命だった時とは違う。

豊かな表情に彩られた一生が、彼の目に映り込んでいた。

「シオン…」

ジョーは、思わず幼女の頭に手を伸ばし、そっと柔らかな髪を撫でた。

少なくとも、この、未来のなかった女の子は、老婆になるまでの一生を全うすることができるのだ。

フランシーヌの暖かさに包まれて、生きることができるのだ。

そう思うと、不覚にも目頭が熱くなった。

シオンの手が、ジョーの握りしめている書類の束を触った。

「あ、ダメよ。お兄ちゃん、お仕事だから」

すかさず、マリアがシオンの手を押さえる。

シオンが触れた弾みに、資料の束の中から、走り書きのメモが落ちた。

ジョーは、それを拾い上げて目を走らせる。