ジョーは、幼女の笑顔の上に重なる白い小さなドクロを見ないように、左目でウインクして笑った。

右目だけで見るシオンのはじける笑顔は、なにものにもかえがたいほどに、まぶしかった。

だが、こんな小さな子供にも死は平等に訪れる。

地球上の人類が絶滅しても、このコロニーの住人だけは助かると、誰もが思っていた。

だからこそ、ここは、ノアの箱船などと呼ばれたのだ。

けれども、ジョーにはわかっていた。

このコロニーにも、多分、未来はない。

マリアに視線を移した。マリアの暖かい笑顔にも白いドクロが映っている。

マリアは、ふう、とため息をついた。

「わたし、地上に両親も兄弟も、捨ててきたの。この子を、シオンだけを護るために…。わたしとシオン、二人だけだったら、このコロニーに移住できたから…」

ジョーは、すこしためらって、訊いた。

「後悔してるんですか? 肉親を残してきたこと」