「…残念。あたし、もう、行かなきゃ」

「親父さんに迎えに来てもらえばいい」

「ううん」

「じゃあ、送るよ」

フランシーヌは、うつむいた。

「なに言ってるの。仮退院中のくせに」

「だって、いくら治安が良くても、もう暗いし…」

一般論を展開するジョーの腰の辺りに、フランシーヌは体当たりするように抱きついた。ジョーが拭いていた皿が、床に落ちてパリンと割れる。

「フランシーヌ…?」

思わず抱きしめた少女の体が、小刻みに震えていた。

「ご…めん。お皿、割れちゃった…」

震える声で、少女は詫びた。

「どうした?」

答えるかわりに、少女は、抱きついた腕にぎゅっと力を入れる。