「水があったかいの? オンセンってなに?」

小首をかしげる少女に、ジョーは優しく微笑んだ。

「連れてってやるよ。戦争が終わったら」

フランシーヌは、浅くうなずいた。

「うん。行きたい。凄く」

「オレさ、地球にいたころは悲惨なガキだったんだ…。ドクロを見て泣き叫んで、親に愛想をつかされて、病院に入れられてさ…」

「だって、海で遊んだんでしょ?」

「だから、一人で遊んだ。海は、変わらなかったから。海だけは、死んだ姿を見せなかったから。…あの頃はね」

今は、海も死んでいるのかもしれない、とは言えなかった。