多少、妙なものが入っていたらしい鍋は、きれいに二人の胃袋に収まった。

仲良く食器の片づけをしている最中、

「新婚さんって、こんななのかなぁ?」

と、フランシーヌが夢見るようにつぶやいた。

「世間の旦那はスポンジ、食わされるのか?」

と言おうとして、かろうじてジョーは思いとどまった。

それを言わないのが男の包容力だ。

「あたし、地球の記憶ってないの」

鍋を洗いながら、ポツンとフランシーヌが言った。

「資料の映像で見るだけ」

「ずっと、このコロニーに?」

「多分、三歳くらいまでは地球だったと思う。でも、ここが出来てすぐ移住したの」

「オレが育ったところは、海の近くでさ、いつも潮の匂いがしてた。夏なんか海の水が温泉みたいにあったかくて、真っ黒になって遊んだなぁ」