共同住宅の狭い台所で、フランシーヌが大根を皮のついたまま、ダンダンと一刀両断にしている。

慣れない片目の生活で、通りを歩いて帰ってくるだけでもクタクタに疲れたジョーは、ソファで仮眠中だ。

「長葱って、どこまで剥くのかなぁ?」

フランシーヌは、眉間に皺を寄せ、まるで刀の手入れをするように左手に握った葱を高く掲げた。眺めていてもわからないので、テキトーにブツ切りにすることにした。

冷蔵庫をあさると、キノコ、チーズ、サラミなどを発見した。

サラミを鍋に入れるヤツはいないかもしれないと思って、それは冷蔵庫に戻した。

大人びた物言いをして背伸びしていても、まだ十二歳。

既に、料理は闇鍋の様相を呈してきている。

ソファで太平楽に眠りこけているジョーは、あずかり知らぬことであった。