コロニー・ノアのコントロールセンタービルに、ジョーは呼び出された。

彼には、月に一度、市井の様子を報告する義務がある。

だが、今日は定例の召喚日ではなかった。

地上の戦局に変化があったり、予測不可能な事態が勃発したときに召喚されるのだが、良いことがあって呼ばれたためしはない。

美人秘書に通されてジョーが奥の部屋に入ると、目つきの鋭い男が、執務机から立ち上がった。

コロニーの総管理官を兼務する国連の軍務総長だった。

「あ、こんちは」

ジョーは、ペコリとお辞儀をしてポリポリと首の後ろをかいた。

軍務総長は、机の上からリモコンを取り、窓に向けてスイッチを操作した。

部屋の壁全面に広がっていた巨大な窓が一瞬にして暗いスモークに変わる。